2024 NAGANO GOOD DESIGN部門 入選「黒松仙醸 季節の遊び酒シリーズ」

名称

黒松仙醸 季節の遊び酒シリーズ

事業者名

株式会社仙醸(伊那市)

黒松仙醸 季節の遊び酒シリーズについて

■背景と課題

当社は創業158年の老舗蔵元です。南アルプスの水と、 地元の米で醸す日本酒は、全国新酒鑑評会で3年連続金賞受賞するなど、高い評価をいただいています。

市場の成熟化に伴い、日本酒も季節折々の提案を求められます。日本酒業界では古くから、季節商品というと、「秋のひやおろし」、「冬のしぼりたて」、「夏の生酒、夏酒」が一般的です。当社も「黒松仙醸 純米ひやおろし」などを長年販売してきました。

一方、長野県内には80の酒蔵があり、縮小する日本酒市場で差別化するため、商品ラベルには、「純米吟醸」、「上伊那産美山錦」、「精米歩合50%(お米の磨き割合)」、「1801号酵母」などが記載されています。しかし、多数の商品が一斉に並ぶ酒売場で、自
社商品の価値をお客様に伝えることは難しく、当社の季節商品の売上も伸び悩んでいました。

■リニューアルと成果

そこで季節商品のリニューアルを行いました。これが 「季節の遊び酒」です。コンセプトは以下のとおりです。

①生き物をコンセプトに

生き物の名前をデザインモチーフと商品名にしました。例えば、「黒松仙醸 純米大吟醸 直汲み生原酒」は「フクロウ」に、 「黒松仙醸 純米吟醸 うすにごり」は「ウサギ」に、「黒松仙醸 純米大吟醸 夏酒」は「ツバメ」に、 「黒松仙醸 純米ひやおろし」は「ツキノワ
グマ」にそれぞれ変更しました。

当社の社名「仙醸」は南アルプスの仙丈ケ岳に由来しています。大自然の恵みである清澄な水と良質な酒米で醸された日本酒に、南アルプスの生き物たちの名前を付けることは感慨深いものがありました。デザインも躍動感のある生き物を表現するものに変わりました。

②デザインの細部へのこだわり

伊那市在住の地元クリエイターとの協働により、 ラベルの細部にこだわりました。
説明文のほか、QRコード接続のWEBサイトで、伊那谷の自然や生き物の魅力、商品の味わいやペアリング情報などを掲載。SNSでも積極的に情報発信を行っています。また、伝統や地域性も重視しました。一例を挙げると、日本らしさ ・上質感を表現するため、北斎画の一部を背景モチーフに採用。版画のようにラベルに奥行きを与えます。また、ボトルカラーと調和するカラー箔、特殊なホログラム箔を効果的に用いています。

さらに、見た目からお酒の味わいをイメージできるよう心掛けました。軽やかな味わいの「ひやしざけ」は躍動感あるツバメ、 熟成された「ひやおろし」は落ち着いたツキノワグマなど、生き物の個性で味わいを視覚的に表現しています。

③生産性向上、売上増にも貢献:

以前は、酒質に関する詳細情報を商品に記載するため、出荷ロットごとに、表ラベルとは別の裏ラベルを都度印刷し貼っていました。今回、詳細な酒質情報の記載をやめる決断をしたことで2枚だったラベルを1枚に統一し、作業効率が向上しました。また和紙風の質感を保ちつつ、耐水性や耐摩耗性に優れた素材を新たに採用。
輸送中の温度変化による結露や摩擦からラベルを保護するためのプラスチック袋が不要となりました。脱プラスチックと生産性向上につながっています。
「季節の遊び酒シリーズ」の売上は、リニューアル前と比較して270%に増加。売場でのチラシ ・ポスター ・POP ・プライスカード提供も好評で、店頭での存在感を高めています。リニューアルから2年目の今期も対前年比売上198%と好調で、台湾、シンガポールへの輸出も始まるなど、さらなる販売増が期待されています。

売上増に伴う増産により、米の仕入れも増えていて、米農家からも喜びの声が聞かれます。今後も地域農業の活性化に貢献したいと考えています。

分類

NAGANO GOOD DESIGN部門

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