2022NAGANO GOOD DESIGN部門 大賞「スギノモリ・ブルワリー narai」

名称

スギノモリ・ブルワリー narai

事業者名

杉の森酒造株式会社(塩尻市)

naraiについて

元酒造兼住居だった古民家を、塩尻市と竹中工務店が協働で再生するプロジェクトの構成検討の中で、宿泊施設・レストラン・大浴場等で施設を形成し、酒蔵は廃止される予定でしたが、建物が酒蔵であった歴史背景や、日本酒という無形文化が地域の精神的支柱であったとの奈良井宿住民の声から「酒造」は未来へ継承すべき資産だと考えました。

また、日本酒業界を見渡したとき年々酒蔵が減少していること、ワインに比べ単価が低いこと、酒造りの時期以外は働き手の仕事が不安定であること等の課題を、経営のデザイン化を図ることにより、改善できるのではないかと考えたました。

これらの理由から、これまでの日本酒業界の常識に捉われない製造環境の改善、世界に目を向けた販路の開拓など、持続可能な新たなビジネスモデルの構築に取り掛かるに至りました。
酒造環境を改善する上で、多くの酒蔵が行う大人数・分業制の仕組みを見直し、杜氏1人が一貫して酒造りを行うことができる空間をデザイン。

その結果、製造面積をこれまでの約 3 分の 1 の 250 m²程度までミニマム化したマイクロブルワリーが生まれました。これにより醸造責任者(= 杜氏)が全工程を監修できるようになり、小ロット生産ながらも高単価に見合った高品質・高付加価値な商品づくりを実現。
また、通常の酒蔵では冬場のみ醸造を行うため職が安定しないという課題を解決するため、年中生産可能な四季醸造方式(冷蔵室の新設)を取り入れました。
また、ボトルデザインでは、通常の日本酒ラベルにみられる紙やシールを瓶に貼り付ける作業負担を見直し、ボトルへのダイレクト印刷に改善することで、出荷作業の効率化を図っています。
日本酒ブランド名の「narai」は日本酒をきっかけに世界の人に奈良井という地域を知って足を運んでもらいたいという想いが込められています。

ボトルデザインは山間に位置する蔵の地域特性と、社名である「杉の森」を感じさせるグラフィックを黒のボトルに黒のインクで印刷し、主張しすぎない日本らしい美意識とストイックな世界観を表現。

パッケージは環境に配慮し、再生可能な段ボールを採用。以前の杉の森酒造のボトルデザインをモチーフに過剰包装せずそのまま海外発送できるよう独自に設計しました。
再生した酒蔵は同敷地内の宿泊施設のレストランと隣接する特異な環境を生かすため、「見せる酒蔵」をコンセプトに、製造空間自体をサインとして表現することを試みています。

メイン空間の大壁画は、歴史継承の観点から改修前の空間写真を原寸大で施すことで新旧対比のアートウォールとしました。各所に配した山型のシンボルマークは建物にもともと取り付けられていた名もなき木工細工がモチーフになっています。

2021 年 10 月より醸造を開始し、クラウドファンディングサイト「Makuake」では多くのサポーターの方々に応援購入をいただき、想定を上回る約 300 万円(約 300人)の支援をいただきました。

2022年2月10日よりEコマースを中心に一般販売を開始。国内では、地元長野を中心に全国の酒販店での販売、ラグジュアリーホテルやミシュラン星付きのレストランでの取り扱いが開始しています。
また、海外進出も積極的に行なっており、現在(2022 年 10 月)には、シンガポール、香港、台湾などのアジア圏を中心に取り扱いが開始。9 月末から 10 月頭にシンガポールで行われたF1 グランプリでは、蔵元サンドバーグ弘が現地へ向かい講演を行いました。

2022 年 5 月に発表された IWC(インターナショナルワインチャレンジ)の SAKE 部門では、大会推奨賞を受賞、また、フランスで行われる Kura Master(クラ マスター)では金賞を受賞。
その他、デザインの部では TOPAWARDS ASIA(トップアワードアジア)で 2022 年四半期の金賞を受賞、第 56 回日本サインデザイン大賞 2022 で銅賞を受賞し、日本パッケージデザイン大賞にも入賞しています。

日頃から SNS の更新を心がけ、杜氏の酒造りの様子や奈良井宿の風景を更新することで季節の移り変わりや酒蔵の「今」の様子を日英で発信しています。

分類

NAGANO GOOD DESIGN部門

PAGE TOP